引き渡しが近づくと、ご近所への挨拶をどこまでやればいいのか急に分からなくなりますよね。僕もそうでした。
ややこしい話は後にして、先に答えだけ書きます。新築で最初にやることは、この4つを決めるだけです。
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 誰に | 両隣2軒・向かい3軒・裏1軒の計6軒くらい |
| いつ | 引っ越しの前日か当日の午前中。遅くても1週間以内 |
| いくら | 1軒500〜1,000円の消え物(お菓子・洗剤・タオル) |
| 何と言うか | 名字と「越してきました。よろしくお願いします」の2つだけ |
この4つさえ押さえれば、新築のご近所付き合いの入り口は終わりです。ここから先は、やらなくても困りません。
申し遅れました。僕はあいみつといって、2022年に地元の中堅ハウスメーカーで家を建てた35歳の会社員です。住宅業界の人間ではないので、書けるのは自分と友人たちの話だけになります。
ちなみに家づくりのほうは、相見積もりを取らずに1社で決めて、あとから350万円ほど高く買っていたことに気づいたクチです。だから「知らないまま進めて損する」話には人一倍うるさいです。
あいみつ挨拶が足りなくて怒られる人より、やりすぎて気まずくなる人のほうが多い気がします。
\最初に結論/
「みんなの住宅失敗談」運営者。ハウスメーカーに言われるまま契約して、350万円もぼったくられた経験あり。
同じ後悔をする人を減らしたくて(本当はボッタクリ業者にムカつきすぎて)全国の住宅の失敗談を集めて発信しています。合言葉は「家を買うときは必ず相見積もりを取れ」。
新築のご近所付き合いで最初にやること
- 範囲は6軒くらいで足りる
- 前日か当日の午前中に行く
- 手土産は500〜1,000円
- 言うのは名字とひとことだけ
やることは4つだけです。誰に行くか、いつ行くか、何を持つか、何と言うか。順番に見ていきます。
誰に挨拶する?範囲は6軒が目安
一戸建てなら、両隣2軒・向かい3軒・裏の1軒。この6軒でじゅうぶんです。
昔から「向こう三軒両隣」という言い方があって、今もだいたいこの範囲が目安になっています。角地なら、道をはさんだ斜め前の家を足すくらいですね。
- 両隣の2軒
- 向かいの3軒
- 家の裏の1軒
- 班長や自治会長の家
- 角地なら斜め前の家
班長さんの家だけは、地域によって回覧板や集金の窓口になるので入れておくと後が楽です。誰が班長か分からないときは、隣の人に聞けば教えてもらえます。
逆に、そこから先の家まで一軒ずつまわる必要はないです。10軒も20軒もまわると、もらった側が「うちも何か返さないと」と身構えてしまいます。
いつ行く?前日か当日の午前中
いちばん無難なのは引っ越しの前日か当日の午前中です。トラックの出入りで迷惑をかける前に、先に一声かけておくのが目的なので。
当日はどうしてもバタバタするから、前日に済ませておくと気持ちが軽くなります。都合がつかなくても、引っ越しから1週間以内なら遅いとは思われません。
時間帯は10時から18時のあいだ。食事どきの12時前後と、夜の19時以降は外します。
留守だったときは、日を変えてもう一度だけ行ってみます。それでも会えなければ、手土産に手紙をそえて郵便受けに入れれば大丈夫です。
手土産の相場は500〜1,000円
相場は1軒あたり500円から1,000円。3,000円を超えるようなものだと、相手が「お返しをしなきゃ」と気を使ってしまいます。
選ぶなら、食べたり使ったりして無くなるもの。置き物や食器は好みが分かれるので外します。
- 個包装のお菓子
- 洗剤やラップ
- 少し良いタオル
- 地域指定のゴミ袋
- コーヒーや紅茶の詰め合わせ
相手の家族構成も好みも分からないので、生ものと日持ちしないものは外したほうが安全です。お菓子にするなら、賞味期限が1か月以上あるものを選びます。
のしは紅白の蝶結び、表書きは「御挨拶」で、下に自分の名字を書きます。名前を覚えてもらうのが本当の目的なので、のしは付けたほうが得です。
何と言う?そのまま使える文例
話すことは3つだけです。名字、どこに越してきたか、これからよろしく。玄関先で1分もあれば終わります。
基本の文例はこれです。そのまま使ってもらってかまいません。
「はじめまして。今度、隣に越してきた○○といいます。工事のあいだ、音でご迷惑をおかけしました。
これからお世話になります、よろしくお願いします」
小さい子どもがいるなら、ここに一文だけ足しておくと後が楽です。先に言っておくと、多少の物音でいちいち気をもまなくてすみます。
「小さい子どもがいるので、うるさいときは遠慮なく言ってください」
留守で会えず、手紙を入れる場合はこれくらいで足ります。長い手紙はかえって重たく感じられます。
「○月○日に隣に越してきた○○です。ごあいさつにうかがいましたがお留守でしたので、こちらを置かせていただきます。これからよろしくお願いします」
気をつけたいのは、長話をしないことと、家に上げてもらわないこと。初回に踏み込むと、次から距離の取り方が難しくなります。



これだけでいいなら、玄関先で1分ですね。身構えてました。
ご近所付き合いはケース別に正解が違う
- 一斉入居は住んだ家から順に
- 後から入るなら早めに動く
- マンションは両隣と上下
ここまでが基本の形です。で、同じ「新築の挨拶」でも、住む場所のタイプで正解が変わります。
分譲地で一斉に入居するとき
まわりも同じ時期に家が建った地域は、全員が新入りなので気楽です。僕の家のまわりもこのタイプでした。
順番は、すでに住み始めている家から。まだ人が入っていない区画は、後日でかまいません。
後から越してきた家が挨拶に来てくれるので、そのときに返せばいいだけです。こちらから空き地の前で待ち構える必要はないです。
注意したいのは、先に住み始めた人がまとめ役になりやすいこと。気の合う人だといいけど、そうでないときに最初から近づきすぎると、あとで離れにくくなります。
僕の場合、入居して2か月くらいはお互い様子見でした。半年たってから、道で会えば話す人が2軒だけできた感じです。それで何も困っていません。
住宅街に後から入るとき
もう関係ができあがっている場所に入るときは、こちらが合わせる側になります。範囲は同じ6軒でいいけど、タイミングだけは早めに動きます。
その土地だけの決まりごとが必ずあるからです。ゴミ出しの曜日と場所、掃除の当番、回覧板をまわす順番あたりですね。
だから挨拶のときに、質問をひとつだけ足しておきます。聞かれた側も悪い気はしないし、会話がきれいに終わります。
「ゴミ出しのきまりだけ、教えていただけますか」
あれこれ質問を重ねるのは逆効果なので、聞くのは1つで止めます。残りは住みながら覚えれば間に合います。
マンションのとき
マンションは範囲が変わります。両隣と、真上と真下の4戸が基本です。
- 両隣の2戸
- 真上と真下の2戸
- 管理人さんにひとこと
音の話は上下で起きるので、真上と真下だけは外せません。同じ階の端まで全部まわる必要はないです。
あと、管理人さんがいるなら顔を出しておくと得します。困ったことがあったときに、まず相談できる相手ができるので。
ただ、建物によっては顔を合わせない付き合いが当たり前のところもあります。訪問をよく思わない空気なら、無理に回らず管理会社に聞いてしまうのが早いです。



マンションでも、上下の部屋には行っておいたほうがいいんですね。
やらなくていいこと・断っていいこと
ご近所付き合いの話って、やることばかり並べられて終わりがちです。でも僕が家を建てて三年たって思うのは、やらなくていいことを先に決めたほうがずっとラクだということでした。
ここでは、断ってもほとんど問題にならないものを正直に書きます。逆に、断ると困る場面があるものは、その困る中身もそのまま書きます。
- 町内会の加入は基本的に任意
- 高い手土産は相手の負担になる
- 立ち話は五分で切っていい
- 挨拶だけは省かないでおく
この四つのうち、いちばん検索されて、いちばん答えがぼやけているのが町内会の話です。そこから順番に見ていきます。
町内会に入らない選択もある
まず前提として、町内会や自治会は住民が自分たちで作っている集まりです。国や市が入りなさいと決めているものではないので、加入は基本的に任意とされています。
ここまではどの地域でもだいたい同じです。ただ、入らなかったときに何が起きるかは、地域によってけっこう変わります。



入らないと、ゴミ出しで困るって聞いたんですけど本当ですか。
これは本当のこともあるし、まったく関係ないこともあります。分かれ目は、そのゴミ置き場を市が管理しているのか、住民が自分たちで作って掃除しているのかです。
住民が土地を出し合って作った置き場だと、使うなら会費を、という話になりやすいです。ちなみに市の管理なら、加入していなくても普通に使えることが多いようです。
入らない場合に起きやすいことを、ひととおり並べておきます。全部が起きるわけではなく、どれか一つ二つ、という感じです。
- ゴミ置き場の扱いでもめる
- 回覧板が回ってこない
- 防災用品や名簿から外れる
- 子ども会に入りにくくなる
- 行事の連絡が届かない
回覧板が来ないくらいなら、正直そこまで困りません。ただ子どもがいる家だと、子ども会や登校班の連絡が地域の集まり経由になっている所があって、そこだけは先に聞いておいたほうがいいと思います。
おすすめの落としどころは、最初の一年だけ入って様子を見ることです。入るのは簡単で、やめるのも一年ごとの更新のときに言えば済むので、あとからいくらでも変えられます。
僕の場合は入ったものの、夏祭りにも清掃にもほとんど出ていません。会費だけ払って行事は都合が合うときだけ、という人は同じ地区に何人もいて、それで何か言われたことは今のところないです。
逆に役員が回ってきたときは、断っていいと思っています。仕事の都合を正直に言って、その代わり草刈りには出ます、みたいに一つだけ引き受ければ角は立ちません。
過剰な贈答はしない
挨拶の品を選ぶとき、つい良さそうなものを選びたくなります。でも高い物を渡されると、相手は同じくらいの物を返さないと悪いな、と考え始めます。
最初の挨拶なら五百円から千円くらいで十分です。洗剤やタオル、日持ちするお菓子あたりが無難で、相手の家族構成を知らなくても外しません。
そのあとの中元や歳暮も、今の分譲地や新しい住宅街ではほとんど見かけません。僕のまわりで続けている家は一軒もなく、始めてしまうと相手もやめられなくなるので、最初からやらないほうが親切だと思います。
旅行のお土産も同じです。一度配ると次から配らないときに気まずくなるので、配るなら毎回同じ相手だけ、と決めておくくらいがちょうどいいです。
もらったときの返し方だけ書いておきます。同じくらいの値段の物を、一週間以内に、ついでみたいな顔で渡す。これで終わりです。
深入りしない距離感でいい
ご近所付き合いがしんどくなる人の多くは、挨拶が嫌なのではなくて、そのあとの長い立ち話や家の行き来がきついんだと思います。僕もそっち側の人間です。
なので、最初から距離を決めておくのが一番効きます。目安はこのあたりです。
- 立ち話は五分で切り上げる
- 連絡先は聞かれたら渡す
- 家には上げない・上がらない
- 家庭の事情は自分から話さない
切り上げ方は、決まり文句を一つ持っておくとラクです。「すみません、今ちょっとバタバタしてて」で、たいていの立ち話は終わります。
連絡先も、自分から交換をお願いしなくていいです。工事の音や災害のときに困るケースはありますけど、そのときは口頭で足ります。
ただ一つだけ、これを省くと一気に空気が悪くなるものがあります。それがすれ違ったときの挨拶で、これだけは毎回やっておいたほうがいいです。
付き合いが薄い家でも、顔を合わせて会釈する関係が続いていれば、何か困ったときに一言だけ言い合えます。逆に挨拶がない状態で何かが起きると、いきなり苦情から始まってしまいます。
ご近所トラブルを未然に防ぐ小さな習慣
近所ともめる原因って、性格の相性よりも、生活のやり方のズレから始まることのほうが多いです。しかも本人にはまったく自覚がないまま溜まっていきます。
ここでは、引っ越したその日から意識できる小さい習慣を三つに絞ります。手間はほぼゼロなのに、効き目は大きい部分です。
- 音は中身より時間帯を見る
- 路上駐車が一番もめる
- 境界は写真に残しておく
どれも一度やっておけば、あとは意識しなくても勝手に続きます。順に見ていきます。
生活音は時間帯だけ気をつける
一戸建てだから音は平気、と思われがちですけど、隣との距離が近い新しい住宅街だと普通に聞こえます。とくに窓を開ける季節はそうです。
気をつける中身は単純で、時間帯だけです。目安は朝八時前と夜九時以降で、この時間に洗濯機や掃除機を回さない。それだけで苦情の芽はかなり減ります。
意外と見落とされるのが、外に出る音のほうです。深夜の車のドアの閉め方、庭でのおしゃべり、犬の鳴き声あたりは、家の中の音よりよく響きます。



うちは子どもの足音より、夜に窓を開けて話してた声のほうが聞こえてたみたいです。
あと、入居してからの工事も一言いるやつです。エアコンの追加や外構の後付けは音も人の出入りも増えるので、前日に隣だけでも声をかけておくと空気が変わります。
車の停め方と来客のときの決め事
近所トラブルの相談で、いちばんよく見るのが車の話です。音や臭いと違って、目の前に物が置かれるので感情が動きやすいんだと思います。
自分の家の前だから停めていい、という感覚は捨てたほうが安全です。道路は家の持ち物ではないので、家の前でも路上駐車は路上駐車として見られます。
やっておくと本当に効くのが、来客用の駐車場所を先に決めておくことです。近くのコインパーキングを一つ調べて、家族で共有しておくだけで済みます。
- 家の前でも路上駐車は避ける
- 来客用の停め先を先に決める
- 切り返しで隣地に入らない
- 荷下ろしでも長く停めない
あと地味に見られているのが、車庫入れの切り返しです。隣の敷地や花壇にタイヤが少し乗るだけでも、毎日見ている人にはしっかり伝わります。
境界と越境の話は先に自分から
これは新築だからこそ、最初にやっておく価値があります。引き渡しのときに境界の杭やプレートの位置を教えてもらって、写真を撮っておいてください。
数年たつと草や土で埋まって見えなくなります。何かあったときに写真が一枚あるだけで、話し合いの空気がまったく変わります。
そのうえで、はみ出しやすい物も知っておくとラクです。よくあるのはこのあたりです。
- 庭木の枝と落ち葉
- カーポートからの雨だれ
- 室外機の風の向き
- 物置やフェンスの土台
コツは一つだけです。越境は自分から先に言う、これに尽きます。
言われてから対応すると、どうしても相手が我慢していた時間の分だけ不満が乗っています。うちの枝が伸びてきてますよね、と自分から切り出すと、だいたい気にしてないですよ、で終わります。
逆に隣の木が伸びてきた側になったときは、いきなり切らないほうがいいです。数年前に決まりが変わって、条件がそろえば自分で切れる場合もあるようですけど、条件が細かいので、まずは一声かけるほうが早いと思います。
ご近所付き合いで実感した5人の本音
ここからは、僕を入れた5人にご近所付き合いの話を聞かせてもらいました。うまくいった人もいれば、いまだにモヤッとしたままの人もいます。
最初の1か月で気楽に:あいみつ・35歳
正直に言うと、僕は最初、ご近所付き合いなんて面倒だなと思ってました。仕事から帰ったら誰とも話したくない性格で、引き渡し前は「挨拶だけ済ませたら、あとは会釈でいい」くらいに考えてたんです。
気が変わったのは、引っ越しの翌週でした。うちの前の道で娘が自転車の練習をしてて、転んだところを隣のご夫婦がすぐ助け起こしてくれたんです。
妻が慌てて出ていったときには、もうばんそうこうまで貼られてました。僕はといえば、玄関で靴も履かずに立ち尽くしてただけです。



面倒だと思ってたのに、助けられる側になると急に頭が下がるんですよね。
それでやったことは、大したことじゃないです。最初の1か月だけ、ゴミ出しの時間を10分早めて、外で会った人に天気の話を1つ足す。それだけでした。
天気の話といっても、暑いですねと言って終わりです。それでも顔と名前が一致するまでの速さが、ぜんぜん違いました。
3か月目には、向こうから声をかけてもらえるようになりました。今は必要なとき以外お互い放っておく感じで、僕にはこの距離がちょうどいいです。
今になって思うのは、最初の1か月に少し動くかどうかで、あとの気楽さがずいぶん変わるってことです。とはいえ僕の場合は助けてもらった負い目で動いただけなので、あんまり偉そうなことは言えません。
町内会の当番が重い:ゆかり・41歳
入居して4年で、班長の順番が2回まわってきました。40世帯ほどの班なので、本来ならもっと先のはずなんですけど。
年配のお宅が続けて抜けたぶんが、そのまま若い世帯に寄ってきた形です。回覧板を配って、月の集金をして、年2回の草取りの連絡を入れる。
一つ一つは10分で終わることばかりなんです。ただ、平日の夜しか動けないので、留守のお宅を3回まわり直すみたいなことが普通に起きます。
集金は今どき現金なので、千円札をくずしてから回らないといけません。これが地味に面倒で、コンビニに寄る時間まで込みで当番だと思ってます。
草取りの日は、朝7時に集合して1時間半ほどです。出てこない家もあって、そのことを誰も口に出さないのが、いちばん空気として重たいところです。
パートを週4に増やしたのが去年で、ちょうど当番と重なったのがしんどかったです。子どもの習い事の送りをその月だけ夫に代わってもらって、それはそれで気をつかいました。
夫は「やめてもいいんじゃない」と言うんですけど、そういう話ではないんですよね。抜けた人のぶんが誰かに乗るところを、こっちはずっと見てきてるので。
重いのは当番そのものより、断ったあとの気まずさのほうだと思います。家そのものには何の不満もないです。ただ、この話だけは、いまだにどう考えたらいいのか分かってません。
1軒だけ挨拶を忘れた:たくみ・29歳
挨拶に回ったのは引っ越しの前日だった。両隣と向かいの3軒、それと真裏。調べたとおりに動いたつもりだった。
抜けたのは、裏の並びの端の家だ。うちの土地とは角が少し重なってるだけで、そもそも建物の向きが違う。地図を見たときに、正面じゃないから外していいと勝手に決めた。
その家は、庭に背の高い木が1本あって、道から見てもすぐ分かる。前を通るたびに目に入ってたのに、半年のあいだ一度も自分と結びつかなかった。
気づいたのは半年後。境界のブロックの上に、うちの物置の屋根が数センチ出てると言われたときだ。



挨拶にも行ってない家へ、いきなり謝りに行くのがいちばんきつかったです。
出てたのは事実だから、そこは謝って直した。ただ、そのときに「挨拶にも来てもらってないしね」と一言ついてきた。
直すのに半日と、業者に払った分が少しかかった。金額よりも、休みが1日つぶれたことのほうが応えた。
工事のときの車の停め方も、半年ずっと目についてたらしい。言われてみればそのとおりで、返す言葉がなかった。
今は普通に話すし、犬の話までする。ただ、あの一言は今も頭のどこかに残ってる。要は、両隣と向かい3軒という数字だけを信じた自分が浅かっただけの話だ。
台風の夜に助けられた:みなみ・34歳
去年の秋の、台風の夜のことです。夫が出張でいなくて、下の子が熱を出してて、そこに停電まで重なりました。
家を建てたばかりで、非常用の何かなんて一つも用意してませんでした。スマホの明かりで子どもをなだめてたら、玄関のチャイムが鳴ったんです。
斜め向かいの奥さんで、手にランタンを2つ持ってました。「うち多めにあるから」って、それだけ言って置いていってくれて。



あの明かりが来るまで、停電がこんなに心細いものだと思ってませんでした。
上の子はランタンが面白かったみたいで、次の日も点けたがってました。停電のあいだ一度も泣かなかったのは、たぶんあの光があったからです。
正直に言うと、その方とはそれまで立ち話を3回ほどした程度の間柄でした。引っ越しのときにお菓子を持っていって、あとはゴミ置き場で会うくらいです。
電気が戻ったのは明け方の4時ごろでした。子どもの熱も朝には下がって、結局その日は病院にも行かずに済んでます。
翌日にお返しを持っていったら、玄関先で長いこと笑われました。気にしなくていい、順番だからって言われて。
聞けば、前に住んでた人にも同じことをしてもらったんだそうです。「うちも越してきたときは何も持ってなかったのよ」と、笑いながら言われました。
距離が近すぎて疲れた:こうへい・52歳
入居したのは6年前です。同じ時期に7軒が建った並びで、年齢の近い家が多かったです。
最初の2年は良かったです。休みの日に庭で顔を合わせれば話をして、車を出すときはお互いに動かしました。
変わったのは、連絡用のグループのやり取りが増えたころからです。日中に届く通知が、1日20件を超える日が出てきました。
中身は宅配の不在票の話や、道路工事の予定です。読んでおかないと外で会ったときに話が合わないので、結局は全部読んでました。
会社では通知を切っていられるのに、家に帰ってからのほうが画面を見てました。妻には、そこまで真面目に読まなくていいと何度も言われました。
7軒のうち、去年に1軒だけ人が入れ替わりました。顔ぶれがほとんど変わらないぶん、抜けにくい空気があったのは確かです。
3年目に、返事をするのをやめました。誰かに何か言われたわけではないです。通知を切ってからのほうが、外で会ったときに普通に話せるようになりました。
今も年2回の掃除には出ますし、回覧板も回します。付き合いの量を減らしたら、付き合いの中身が戻ったという感じで、今のところこの距離で困っていません。
近所は建物と違って後から直せない
ここまで書いてきて、いちばん伝えたいのはこの話です。家の中の不満って、お金と時間をかければたいてい直せます。
壁紙は張り替えられるし、収納も足せる。設備は壊れたら交換すればいいし、間取りだって工事すれば変えられます。
- 家の不満は後から直せる
- 隣に誰が住むかは選べない
- 土地は時間帯を変えて歩く
でも、隣に誰が住んでいるかだけはどうにもなりません。ここが家づくりでいちばん取り返しがつかない部分です。
だから土地を決める前に、その場所を一回だけ見て終わりにしないでほしいです。近所だけは後から変えられません。
おすすめは、時間帯を変えて三回歩くことです。平日の夜、土日の昼、あとできれば雨の日。見える顔がそれぞれ違います。
- ゴミ置き場が荒れてないか
- 路上駐車が並んでないか
- 庭や外構の手入れの様子
- 夜にどれくらい人通りがあるか
とくにゴミ置き場は分かりやすいです。そこがきれいに保たれている地域は、住んでいる人が自分たちで手を入れている証拠だと思っています。



建物ばかり見てて、土地の周りは一回しか歩いてなかったです。
で、ここでもう一つだけ言わせてください。土地から探している人ほど、住宅会社を一社に絞るのを急がないほうがいいです。
売りに出る前の土地情報を持っているのは各社の営業さんなので、一社としか話していないと、その会社が抱えている土地の中からしか選べなくなります。近所の雰囲気まで込みで比べたいなら、複数社の資料をまとめて取り寄せて土地の候補を並べるところから始めると、選択肢がそのまま増えます。
僕はこれをやらずに一社で決めて、あとで三百五十万の差に気づきました。土地も会社も、決めたあとに変えるのがいちばんお金のかかるところです。
あと、住み始めてからの出ていくお金も先に見ておくと安心です。家の維持費で後悔した話のほうにまとめてあるので、余裕があるときにどうぞ。
新築のご近所付き合いに関するよくある質問
最後に、家を建てた人からよく出る質問をまとめておきます。細かいところで迷っている人はここだけ見てもらえれば足ります。
- 挨拶の範囲と時間帯のこと
- 会えないときの代わりの手
- 町内会と役員の断り方
それぞれ、僕が実際に迷ったところと同じ質問です。
- 挨拶は何軒まで回ればいいですか。
両隣と向かいの三軒、それと裏の家までが基本です。角地なら道をはさんだ家も入れておくと安心で、そこから先は無理に広げなくて大丈夫です。
- 何度行っても留守で会えません。
三回行ってだめなら、手紙を添えて品物をポストか玄関先に置く形で問題ないです。名前と、いつ引っ越してきたかと、工事で音が出たお詫びを短く書けば十分伝わります。
- 手土産はいくらくらいが正解ですか。
五百円から千円くらいが一番もらいやすい金額です。二千円を超えると相手がお返しを考え始めるので、高ければいいというものではないです。
- のしは付けたほうがいいですか。
付けなくても失礼にはなりません。ただ名字を覚えてもらえるので、名前だけ入った簡単なものを付けておくと、あとの会話がちょっとラクになります。
- 挨拶は工事の前と入居のあと、どっちですか。
できれば両方ですけど、一回だけなら工事が始まる前です。音やほこりで迷惑をかける前に顔を見せておくほうが、あとの印象がまるで違います。
- 訪ねる時間帯はいつがいいですか。
平日なら夕方の六時から七時ごろ、休日なら昼前後が会いやすいです。食事の時間と早朝、それと夜八時以降は外してください。
- 町内会には入らないとだめですか。
加入は基本的に任意なので、断っても構いません。ただゴミ置き場を住民が管理している地域だと使い方でもめることがあるので、そこだけは入る前に確認しておくと安心です。
- 役員や当番が回ってきたら断れますか。
断れます。事情を正直に伝えたうえで、清掃だけは出ますといった代わりの案を一つ出しておくと、そこまで気まずくならないです。
- 挨拶に子どもを連れて行ってもいいですか。
連れて行ったほうがいいくらいです。小さい子がいると足音や声で気を使う場面が出てくるので、先に顔を見せておくと相手の受け取り方が変わります。
- 隣の人がすでに感じよくないときはどうしますか。
距離を詰めにいかず、会釈と挨拶だけ続けてください。それでも困りごとが起きたときは、直接ぶつからずに住宅会社や市の相談窓口をはさむほうが、こじれずに終わることが多いです。
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まとめ
新築のご近所付き合いは、やることを増やすほどうまくいくものではないです。最初に一回きちんと挨拶して、あとは音と車と境界だけ気をつける。それで足ります。
- 挨拶は工事前と入居後に
- 手土産は千円までで十分
- 町内会は入らない選択もある
- 音と車と境界だけ気をつける
- 土地は時間帯を変えて歩く
町内会も贈り物も、無理に続けなくていいものです。断ったせいで浮くというより、挨拶をしないまま何年も過ごすほうが、よっぽど気まずくなります。
そして家づくり全体で言うと、直せない部分にお金と時間をかけてほしいです。建物の不満はあとから手を入れられますけど、土地と近所はそうはいきません。



僕は建物の打ち合わせばかりに時間を使って、まわりを歩くのは後回しにしてました。
これから土地を決める人は、候補地を夜と休日に一度ずつ歩いてみてください。それだけで、住んでからの安心感がだいぶ変わると思います。









